昨年の12月に小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に持ち帰った小惑星「リュウグウ」の砂に、大量の水をつくるのに十分な量の水素分子と、生命の材料となる有機物の分子が確認されたという▼これはJAXAが明らかにした初期分析の結果で確認されたことである。JAXAではこれまで「リュウグウ」の砂の大きさや色、形などをカタログ化してきている。今後1年をかけて日本をはじめとした14カ国の研究者による詳細な分析が行われることになっている▼リュウグウの表面や、「はやぶさ2」により掘られた人工クレーターから得られた砂から見つかった有機分子がどのようなものなのか。まさに興味津々である。地球を構成する鉱物、海の水、生命の原材料物質は、太陽系初期には原始太陽系星雲の中で密接な関係を持っていたと考えられており、始原的な天体である小惑星から採取した太陽系空間にあった有機物や水がどのようなものであったのか、またどのように相互作用し共存してきたかを探ることで、生命の起源にも迫ることができる。分析の結果が待ち遠しい▼ところで「はやぶさ2」は、今も宇宙空間を飛行している。予定では、2031年7月頃に小惑星「1998KY26」に到着することになっている。その総飛行距離は約100億㌔㍍、搭載のイオンエンジンによる運転時間は約1万3000時間にも及ぶという。「1998KY26」は直径約30㍍、約11分の周期で高速自転している▼まだまだ途方もない距離があり、相当な時間がかかるが、何とか無事にたどり着いてほしい。そしてどんなチャレンジを見せてくれるのか。興味が尽きない。
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