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コラム・素領域

2022年7月8日号

素領域

仕事上で、何らかの評価を下すことの難しさはやればやるほど思い知らされる。それが人物の評価となるとなおさらである▼参考にしたいのが「ゲイン・ロス効果」である。心理学の世界で有名な用語で、もともとマイナスの印象を抱いていた後にプラスの材料が示されると、そのギャップによってプラスの印象を強く受ける、もしくはその逆の効果のことだ。アメリカの興味深い実験でそれが実証されている▼実験者(サクラ)は、自分が持つ魅力または欠点を不特定多数の被験者(学生)に対してアピールする。それも7回続けて伝えるというものだ。実験者は、7回とも高評価狙い(Aグループ)、7回とも低評価狙い(Bグループ)、最初は低評価で次第に高評価に持っていく(Cグループ)、最初は高評価で次第に評価を下げる(Dグループ)といった役割を持って被験者に接した▼この実験で興味深いことは、Cグループに対する印象の変遷である。常に高い魅力を維持しようとするAグループよりも、最終的には印象が良くなり、高評価を獲得するというのである。これがゲイン効果である。逆にDグループは、常に低い評価を受けがちなBグループよりも悪い印象を与えてしまうという結果となった。こちらがロス効果にあたる▼高評価の維持は並み大抵の努力ではできないが、最初は低評価でも、諦めず物事を進めていけば名誉挽回どころか思った以上の評価を受けAグループを印象で上回ってしまう。ただ、今の世の中、即戦力の人材を求める傾向にある。その中にあってこの効果を活かすには、優れた人材を発掘する目を養うと同時に、試行錯誤を辛抱強く見守る態度もまた肝要なのではないだろうか。

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