科学技術の進歩に寄与し
豊かな社会発展に貢献する
唯一の専門紙です。
毎週金曜日発行

TOP > コラム・素領域一覧 > 2022年7月22日号

コラム・素領域

2022年7月22日号

素領域

時間があったので東京ビッグサイトで行われた医薬品・化粧品に関する専門技術展「インターフェックスジャパン」をのぞいてみたら、旭化成のブースで面白いものを見つけた。水分子しか通さない膜でできたチューブに液体を循環させ、その周りで塩水を循環させることで、液体を濃縮するという装置だ。浸透圧を使うという原理も装置の構造もシンプルだが、医薬品の製造過程で必要となる濃縮作業が、加圧・加熱せずにできるため、各社から多くの引き合いがあるという▼科学を突き詰めていくと、複雑な数式の集合体である相対性理論がE=mc2に集約されるように、最終的にはシンプルなものになる。ただし、シンプルな原理原則を実際の現実に適用するためには、確かな技術が必要だ。旭化成の装置も膜についての確かな技術があるからこそ実現できたものだろう▼今号のトップ記事では、新型コロナ検査の品質管理の問題を取り上げたが、品質管理は研究においても非常に重要だ。10年近く前、ネイチャー誌に医学系論文の7割が再現できないという記事が載り、大きな衝撃を与えた。統計解析や解釈の間違い、プロトコールの不十分な記載など、様々な要因があるが、一言で言えば実験と論文の品質管理が不十分なのだ▼旭化成の膜の品質管理について話を聞くと、出荷前に全ての製品について、外側に塩水、内側に水を通して、電気伝導度を測ることで隙間がないかチェックしているという▼各自治体では、新型コロナウイルスを下水から検出する取り組みを進めているが、多くの場合、検出限界以下になる。膜濃縮を使えば、数時間で50倍程度まで濃縮できるため検出できるという。これは様々な実験にも応用できそうだ。基本と技術はいつの時代でも重要だ。

  • facebook
  • twitter
  • Google +
  • はてなブックマーク
  • LINE
  • Mail
THE SCIENCE NEWS
  • facebook
  • twitter
  • Google +
  • はてなブックマーク
  • LINE
  • 購読申込
  • メール