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コラム・素領域

2022年9月9日号

素領域

誠に残念というより、何か大きな虚しさを感じざるを得ない。米ニューヨークの国連本部で約1カ月にわたって行われていた核不拡散条約(NPT)の再検討会議のことである。一カ国の反対で決裂し、最終文書を採択できなかった。その一カ国とは言わずと知れたロシアのことだ▼ロシアといえば、半年前に、弟分的な国と思っていたウクライナが西側(自由主義国)のNATOに入ろうとしたことから、「気にくわない」と一方的に攻め込んだ。10日くらいで首都キーウを陥落させられるとしていたが、ウクライナ軍の抵抗の強さによって現在は泥沼化している▼ロシアにも言い分があろうが、国際的に許されないのは、ザポリージャ原子力発電所を占拠し、「これ以上攻めてきてみろ、原発はどうなるのかな」と人質にとり、「いつでも核兵器をお見舞いすることができるんだぞ」と脅していることだ。NPTの理念には、核軍縮・核不拡散・原子力の平和利用の3本柱が謳われている。ロシアもそのことは百も承知だろう▼にも関わらず、NPT再検討会議で「ウクライナが嘘をつき建設的な議論を阻害した」と、一方的な理由を挙げ、最後の最後まで態度を保留し、土壇場で反対したのである。決議案は全会一致となっているだけに、自国の行為を棚に上げ、NPT体制の信頼を著しく損ねたロシアの責任は重いと言わざるを得ない。とはいえ嘆いてばかりではいられない▼もうすでに次回(2026年)のニューヨーク開催が決まっており、準備が始まっている。「核保有国だけに支配されたくない」という多くの非保有国の声をどのように会議に反映させるか、知恵を結集してもらいたい。

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