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コラム・素領域

2022年9月30日号

素領域

2006年に科学技術・学術政策研究所が「忘れられた科学-数学」を公表してから、数学関連の研究プログラムが立ち上がり、WPIでも数学と他分野の融合拠点ができた。数学協働プログラム、数学アドバンストイノベーションプラットフォームなどで拠点形成も進んだ▼しかし、05~07年と16~18年の数学と数学関連分野の論文数を見ると、世界トップレベルを維持しているものの、各国の伸びが著しく、6位から9位にまで相対的な指標は低下している。ただ、個別の大学では数学関連の論文数は増加傾向を示し、異分野連携も活発になってきている▼日本数学会の調査によると、数理科学の博士は、大学へ就職する割合が減少し、民間への就職割合が増加しているという。ようやく日本でも数学を活用してビジネスを展開しようという動きが活発になってきたためだが、就職先未定等の割合も増加している。共同研究を通じて数学の有用性を実感する企業が多いため、所属する大学や研究室による偏りが起きている可能性がある▼離散幾何解析によって、直感(暗黙知)を取り入れた材料設計の数理モデルを構築し、材料設計を10億倍早くしたり、暗黙知をAIと数理モデルでアルゴリズム化し、医師の意思決定支援を行うAIを実現したり、さらには逆問題で自動運転における緊急回避などをリアルアイムで実現するなど、数学の産業応用は着実に進んでおり、多くの成果も生み出されている▼そうした数理科学の産学連携は進んでいるものの、共同研究1件あたりの金額は高くない。数学の価値を正しく評価できていないためだ。人材の活用と価値向上を両立する施策が求められている。

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