新年あけましておめでとうございます。昨年も科学技術や学術をめぐる様々なできごとがありましたが、今年も研究コミュニティに役立つ情報の発信に努めていきます▼来年度予算案が閣議決定され、研究費も充実することになったわけですが、一方、年末にいろいろな問題が発生しました。一つは福井大学を中心とする査読不正問題です。ムーンショットプログラムのPMを務める福井大の教授が、千葉大、金沢大、浜松医大の3人からの求めに応じて、自らの論文の査読についてコメント案を送っていました。査読は、研究者が切磋琢磨する最も基本的なプロセスであり、研究者コミュニティの健全性を担保するための仕組みです。今回の問題は日本の国際的な信頼に関わるものです。JSTはムーンショットのプロジェクトを廃止し、文科省は査読問題への対応で日本学術会議に審議依頼することにしました▼その学術会議をめぐる問題もあります。政府が12月に示した考え方について、学術会議は独立性を損なう恐れがあるとして、通常国会での立法化に反対する立場を明確にしました。梶田隆章会長は「重大な決意を持って再考を求めてまいります」と語りました。2004年の学術会議改革を取材していた立場としては、議論の健全性が保たれていない気がします。04年改革では3年近く公開で議論が行われたのに対して、今回は自民党PT、学術会議、内閣府が別々に議論し、自民党や内閣府は非公開です。法制化以前にまずは公開でお互いがじっくり議論を戦わせる必要があります。
© 2024 THE SCIENCE NEWS