先日、若い記者に「なぜ日本学術会議は透明性の確保に応じないのか」と聞かれて、少しあきれてしまった。直前にあった内閣府の説明で、会員選考に選考諮問委員会を導入することに学術会議が反対したのは、不透明なプロセスで会員を選びたいためじゃないかと理解してしまったようだ▼そもそも人を選ぶ際の透明性とはなんだろうか。私個人の考えとしては、後から検証可能であることだ。選挙であれば得票数、組織内人事であれば内部・外部評価のスコア、学術会議会員であれば、選考理由とプロセスといったものが残されており、後々に検証できる状態であることが透明性を確保できている状態だ。例えば、政務三役(大臣・副大臣・政務官)や政党幹部などについても、その人の適性、派閥の推薦、トップとの人間関係などの要素によって決められるが、その理由をどの程度説明できるかで、透明性の度合いも決まる▼学術会議の会員は関係学協会等から4000人程度の推薦を受け、その中から選考基準等に則って各分野の専門家集団によって選ばれる。推薦書にはどういった業績があり、どのような理由で会員としてふさわしいのかが明示され、選考委員会でも同様の議論が行われて、会員候補者が選ばれる。政治家の役職と比べると、検証可能性はより高い▼選考諮問委員会を導入することで、検証可能性が高まる理由は特にない。それだけではなく、選考諮問委員会と学術会議側の間に少しでも齟齬があれば、総理が会員候補者を任命しない理由にできる。政府案の狙いは、第三者による透明化ではなく、気に入らない人間を排除する理由づけに見える▼論理的でオープンな議論が求められている。
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