自然科学は、自然の理を理解するものだが、その現象を観察するためには様々なツールが必要になる。こうした観察のための「目の歴史」は、自然科学の発展の歴史とも言える▼17世紀のオランダの科学者アントーニ・ファン・レーウェンフックは、歴史上初めて顕微鏡によって微生物を観察し、「微生物学の父」とも呼ばれている。織物商だったレーウェンフックは、生地の品質を見るため虫眼鏡を使っていたが、その経験の中で単眼式顕微鏡を開発した。様々なものを観察していたが、1674年に湖の水から微小動物(微生物)を発見した▼電子線を利用した顕微鏡である電子顕微鏡は、1931年にドイツのベルリン工科大学で開発された。磁場が電子線にレンズ作用を持つ実験が行われた4年後のことだ。シーメンスは同じ年に電子顕微鏡を売り出した。日本でも、1940年に大阪大学の菅田榮治が初めて国産第一号の電子顕微鏡を完成させている。瀬藤象二が技術開発に貢献した▼光学顕微鏡も電子顕微鏡も見える細かさ(解像度)は限界近くまで到達しつつある。光学顕微鏡は対象物に蛍光を導入したり、光学カメラを高速化・高度化することで、見える機能を増やしてきた。電子顕微鏡は、クライオのように凍らせてから多くの画像を撮り、コンピューターで再構成することで対象物を増やした。また磁場フリー電子顕微鏡により、磁性を持つ物質の解析も可能になり、幅広い分野の研究開発を大きく進展させようとしている▼日本顕微鏡学会の学術講演会が26日から開催され、見えなかったものを見るために日々取り組んでいる研究の成果が紹介される。今後の科学の方向が見える良い機会になるだろう。
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