「2025年度新規公募分から、学術論文等の即時オープンアクセス(OA)を実現する」。CSTIが掲げた政府としての目標だが、これを実現するためには大きな課題が残されている▼OAには、出版社側にAPCを支払い出版社のプラットフォームで論文を公開するゴールドOAと、著者最終校正版をリポジトリで公開するグリーンOAがある。日本ではグリーンOAを基本としつつ、ゴールドOAや出版社との交渉力の強化なども進めるという▼グリーンは、費用はかからないものの、国際的な研究論文流通網中に入ることは難しいため、せっかく公開していても世界から見えない状態にあることが多い。一方でゴールドは費用がかさみ、さらに主導権を出版社に取られてしまう。そのため、国内外では購読料と出版費用を一体化した転換契約が進んでいるが、国内での転換契約の動きは欧米と比べて遅れており、トップ大学はいくつかの出版社と転換契約を実現し、中小規模の地方大学などは取り残されている。最終的に購読する雑誌や出版する論文数などは各大学によって異なるため、例えば、国立大学全体としての大口契約とはならないためだ▼これまでの取材経験からは、イノベーションは分野や領域の界面で生まれることが多いが、イノベーションの種になる発見は多様性の中で生まれるといえる。小さな大学であっても、世界トップレベルの研究者は存在し、彼らが世界の論文流通から取り残されることになれば、結果として、イノベーション創出確率は低下する。全国に散らばる一流研究者が論文にアクセスでき、気軽に投稿できるようなシステムの構築が急務となっている。
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