8月11日は「山の日」で、2014年に国民の祝日に制定された。海の日と比較すると少し影が薄いが「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」趣旨はなかなか素敵だ▼とはいえ警視庁によれば昨年の山岳遭難は3015件で3506人が受難。そのうち死亡・行方不明者は327人だった。発生件数は統計の残る昭和36年から平成初期まで年間500件程度で横ばいだったが、以降一貫して増加傾向で推移している。コロナ禍で一時減少するも、昨年は過去最多となった▼今年7月中の富士山の登山者が6万3778人となりコロナ禍前の2019年度比で約17%増加したことを受け、山梨県は最も多くの人が富士山を訪れるお盆の時期を前に、「弾丸登山」を控えるよう呼びかけている。また山梨県警と連携して、登山道が過密状態になった際に滑落事故等につながる混雑を緩和するため通行規制を行うという。比較的身近な富士山ですら年間50~70件程度の遭難事故が起きている▼東北大学TCPAIと東北ドローンは今年、熱画像カメラを用いて自動飛行ドローンと人検出AIによる山岳遭難者探索システムを開発。東京工業大学とソフトバンクは2016年からドローン無線中継システムを活用した遭難者捜索支援システムの開発に取り組んでいる。いずれも遭難者の早期救助や二次災害を防ぐもので実用化が期待される▼日本列島は約7割を山地と丘陵地が占め、そこから水をはじめ多くの恩恵を得ている。親しむだけでなく感謝の心を忘れずにいたい。
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