イグ・ノーベル賞の授賞式が9月14日にオンラインで開催され、今年も日本人の受賞者が誕生した。Annals of Improbable Research誌の編集長であるマーク・エイブラハム氏によって1991年に創設された。「人々を笑わせ、そして考えさせる研究」に対し複数部門で賞が毎年贈られて、今年が第33回目▼今年は栄養学賞が明治大学の宮下芳明氏(総合数理学部教授)と中村裕美氏(研究当時大学院生、現在は東京大学特任准教授)の「電気刺激を用いた箸やストローが人の味覚をどのように変えるかを調べた実験」に対して贈られた。プレゼンターは96年ノーベル生理学・医学賞受賞者のピーター・ドハーティー氏が務めた。受賞者には賞状などが贈られた▼受賞対象の研究は宮下教授らが2011年に発表した、微弱な電流をストローや箸に流すことで飲食物の味を変えて食体験の味覚を拡張する提案についてで、現在まで研究を展開してきた。21年にはキリンホールディングスと共同で減塩食の味わいを増強させる電気刺激波形を見いだし、箸型デバイスに適用。実際に減塩食の習慣がある人々を対象とした臨床試験を行い、同デバイスで減塩食を口にしたときに感じる塩味が1・5倍に増強することを確認した。デバイスは今年同社から「Electric Salt(エレキソルト)」の名称で発売が予定されている▼宮下氏らの研究は人々の健康とQOLの向上に貢献するもので、現在はヒューマンコンピューターインタラクション(HCI)への応用を目指しているという。
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