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コラム・素領域

2023年11月3日号

素領域

転ばぬ先の杖。前もって準備しておけば物事で失敗することがないというたとえだが、近年の政策を見ていると、どうも、この言葉を忘れてしまっているようだ▼国立大学が法人化して以降、運営費交付金が減少したことで、各研究室に配分される校費は大幅に減ってしまった。財務省は、競争的資金などが増えたことで国立大学自体の事業費は増えているのだから、経営努力が足りないと以前から主張しているが、実は、国立から法人になったことで、それまで適用されていなかった消防法などの各種規則が適用されるようになり、国立大学全体で数百億円程度のコストアップにつながった▼前提条件として、各大学への資金投入量には大きな格差があり、その上でコストは上がったため、競争的資金をあまり獲得できない大学との格差は拡大。研究費、人員、環境のいずれもが深刻な状況になっている。その結果、日本全体の研究力が低下したことは各種のデータが示している▼少し想像力を働かせれば、法人化を議論していた当時でも予見できたはずだが、公務員の人数を減らすという行革の目的に引っ張られ準備不足なまま法人化したため、この結果を招いた▼こうした政策の不具合は様々なところでみられる。人材育成しかり、各分野の研究開発しかりである。ただし、解決のためには、一方に対して文句を言うのではなく、現場と政策立案者、双方がお互いを尊重し協力しなければならない。世界的地位が低下している中では待ったなしの課題だ。

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