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コラム・素領域

2024年4月5日号

素領域

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、2009年頃に中国で発生が報告されたダニ媒介感染症で、11年に初めて原因ウイルスが特定された。日本国内では13年1月、山口県で海外渡航歴のない男性の感染が確認され、それ以降、九州地方と中国・四国地方で感染例が相次いだ。その後、近畿地方にまで広がりをみせていたが、21年には静岡県で初めて感染が確認された▼当初、中国や韓国でヒト-ヒト感染が報告されていたが、日本でも23年4月、90代男性から20代医師へのヒト-ヒト感染が確認された。SFTSを発症した患者には、突然の発熱、下痢や下血といった消化器症状とともに血小板減少と白血球減少がみられ、重症例では多臓器不全に陥り死亡する。日本における致命率は27%と高く、現在までに確立した特異的治療はない▼長崎大学ではSFTSに感染しても発症しない動物と、ヒトなどの発症メカニズムの違いを解明するとともに、ワクチンや治療薬の開発を進めている。診断にはPCRが使われているが、より簡便な診断法の開発も進められている。この分野で、日本が世界トップを走っているためだ▼一方、韓国では既にバイオベンチャーがワクチンの非臨床試験に入っている。基礎研究で一歩先んじている日本が、実用化を加速するためには新たな戦略が必要だ。マダニが媒介するSFTSは犬や猫などにも感染する。地球温暖化の影響でSFTSの感染確認地域は世界的にも増加しており、ペットを介して広がると感染爆発を起こしかねない。まずペット用のワクチンや治療薬を開発し、それをヒトにも拡大するといった、従来にない戦略も一つの選択肢だ。

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