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コラム・素領域

2024年5月24日号

素領域

原子核物理を探究するため、様々な加速器が活躍している。大雑把に分けると、原子核の進化を見る理研RIビームファクトリーや阪大RCNP、陽子や中性子などを対象とするJ-PARCやSPring-8、さらにクォークやグルーオンを見るための米国の重イオン衝突型加速器(RHIC)やCERNの大型ハドロンコライダー(LHC)がある▼銀河や恒星、地球などを構成する陽子や中性子、原子核の質量の起源は1%がヒッグス粒子で、99%がクォークとグルーオンのダイナミクスだと予測されているが、その99%の中身は理解できていない。またクォークはほぼ質量ゼロの相対論的粒子だが、それらがどのように結合して核子や原子核を形成しているのかがわかっていない。さらに相対的に運動するクォークとグルーオンがどのように1/2の核子スピンを生み出すのか。米国の電子・イオン衝突型加速器(EIC)計画は、高エネルギー電子と核子・原子核を衝突させることで、従来の加速器では到達することが難しい、こうした未解決問題に挑む▼米国では、EICの意義については核物理学の進展だけでなく、量子コンピューターや核融合プラズマに役立つということで巨額の投資への理解が得られた。日本がEICに政府として参加するかどうかの判断も学術的意義に加え、社会的意義が重要になる▼費用対効果も大切だ。研究者コミュニティの試算では日本が参加した場合の機器等の開発費用は約90億円程度だが、EICの中で重要な位置づけの装置だという。一方、日本に国際リニアコライダー(ILC)を誘致しようという計画がある。これはEICと学術的意義が一部重なり、日本の負担は数千億円台後半と見積もられている。円安や資材価格高騰の中で、どういう選択が国民の理解を得られるのかを考える必要があるだろう。

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