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コラム・素領域

2024年10月4日号

素領域

東京大学大学院工学研究科の古澤明研究室で研究開発が行われてきた、光の量子コンピューターを実用化するため、東大発ベンチャーOptQC社が発足した。量子コンピューターというと、超伝導回路、原子、電子などを量子的に操作するもので、日本でも理研が実機を開発するなど、社会実装に向けて研究開発が進んでいる。一方、光を使った量子コンピューターは量子操作した光パルスが量子ビットとして使えるため、大規模化が容易だが、光パルスを正確に操作する必要がある▼光通信では、長距離による減衰を防ぐため中継機が導入されているが、これは光信号を一度電気信号に直し、そこからまた光信号を出力する。それならいっそのこと、中継も光で行えば良いではないかというアイデアは当然出てくる。そのためNTTなどでは、光の中継機や増幅器の開発がかなり以前から行われてきた▼古澤研ではこれまで掛け算のできる光量子コンピューターなど、多くの成果が出されているが、これは光通信で培われてきた様々な技術が発展してきたことによる部分が大きい。OptQCの高瀬寛CEOは「実機を製造できる段階まできた」という。同社では2025年度中に安定稼働の1号機、27年度中に高速性特化の2号機、29年度中に量子特化型の3号機を構築し、それぞれ翌年には公開する計画だ▼近年の研究開発の進展は、他分野との融合や連携によってもたらされることが多い。また今回の場合、超低消費電力の量子コンピューター実現によるエネルギー問題解決などの波及効果も期待できる。ことほど左様に異分野連携は重要だが、他分野と交流する時間がないことが、イノベーションを阻害している。

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