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コラム・素領域

2024年10月25日号

素領域

先日、日本三景の一つ、松島に泊まることがあったが、例年とは異なり、牡蠣が痩せてしまっていて非常に残念な思いをした。翌日の八戸の市場では、三陸産が痩せている一方で、北海道産はプリッとしてクリーミーな味わいだった。しかし、名産のイカは不漁で市場関係者の顔は明るくなかった▼北極海域での氷の減少は、偏西風を蛇行させ、台風の進路や地球全体の空気の流れを変えてしまっている。さらに海洋大循環にも大きな影響を与えており、日本近海の海水温を引き上げている。こうしたことが海洋資源の分布の変化につながっている▼地球温暖化が叫ばれて久しいが、一般市民が実感するレベルまで影響が出てきている。一方、その影響がどのように出てくるのかを予測するための基礎的なデータ収集は十分ではないのが現状だ▼衛星観測技術は進んだものの、海については表面温度など限られた情報しか得られない。そのため、アルゴ計画では世界中の海水温や塩分濃度などの様々なデータを計測できるロボット「アルゴフロート」で収集しているが、ロシア沿岸や南シナ海などは空白地帯になっている。地上の高度別の温度や湿度、風速なども同じような空白地帯が多く存在する。気象予測などは、こうしたデータとモデルを使って行われるわけだが、データの空白が多いほど、精度は低下する▼政治的な状況が、中長期予測の精度を低下させることで、地球温暖化による環境変化への対応力を損なっている。ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の悪化など、世界の分断はさらに進んでいる。今こそ、科学という人類共通の知的な営みを通じた対話と信頼の構築が求められている。

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