近年は集中豪雨や台風、ゲリラ豪雨など、激しい雨の発生回数が増えている▼国交省データによれば、時間当たり降水量50㍉を超すような強い雨の年間発生回数が近年は約30年前の1・4倍に増加している▼水災害による年間被害額も平成30年が約1兆40450億円、翌年の令和元年が2兆1500億円と、それ以前の3~4倍にも拡大している▼そうした水害の対策として治水ダムの建設・再生、放水路や遊水地、ため池、雨水貯留施設の整備、堤防の整備・強化など様々な対策が進められているが、このほど東京都立大学から興味深い研究成果が発表された(2面に記事)▼日本全国の市区町村を対象に分析した結果、河川合流の周辺に存在する農地が、洪水の発生抑制に大きく貢献している可能性を示したという、大澤剛士准教授(大学院都市環境科学研究科)の報告である▼この研究成果の意義については、全国どこにでもある河川の合流場所の周辺にある農地を優先的に保全することで、食料生産と防災の両立が期待できることをあげている▼こうした、農地や都市緑地等の生態系を活用した防災・減災の考え方は「Eco―DRR」というそうで、防災・減災機能だけでなく、生物多様性の保全をはじめ、人間社会に様々な利益をもたらすことも期待されているという▼経済や効率の優先という観点からの土地の利用や開発だけでなく、自然環境保全と防災という観点からの人間の居住環境づくり。こうした考え方は、これからの持続可能社会実現へ向けて非常に重要だ。
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