昨年11月に防災庁設置準備室が内閣官房に設置された。石破茂首相が目指す防災省創設実現へ向けて第一歩を踏み出した形だ。2026年度中の発足を目指すという▼地震、津波、土砂崩れ、火山噴火、豪雪、台風など日本は世界有数の災害大国である。最近では昨年1月の能登半島地震、9月の石川県輪島市の豪雨がある。東海から東日本を襲った、19年10月の台風19・20・21号の被害も大きかった▼さらには東日本大震災や熊本地震。阪神・淡路大震災からは今年で30年になる。「国民を災害から守るためには、防災業務の企画立案機能を抜本的に強化し、平時から不断に万全の備えを行うことが必要不可欠であります」▼「そのためには専任の大臣を置き、十分な数の災害対応のエキスパートをそろえた『本気の事前防災』のための組織が必要であり、これが、私が設置を目指す防災庁であります」。首相は準備室発足に際しそう訓示した▼自然現象を止めることはできないが、それによる被害を少しでも減らす「減災」は可能である。被災後の復興、被災者支援にもより注力すべきだ▼それには、事前の備えが大切である。大災害の際には国・自治体・民間が協力し、救助・救援、避難生活支援、被災地復興に力を尽くすことが必要だが、被害をさらに減らし、一人でも多くの命を守るためには、一層の対策と連携・協力が求められる▼首都圏や中京圏、近畿圏のような過密する大都市で懸念される大地震に対しては、事前の防災・減災対策だけにとどまらず、100年、いや1000年先をも見据えた、災害に強い都市づくりへ向けた再構築を検討すべきである▼災害大国から防災大国へ。「防災庁」そして「防災省」に期待したい。
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