米国国立衛生研究所(NIH)はX(旧ツイッター)上で、各研究機関が政府に請求できる間接経費の上限を一律15%にすると発表した。これにより年間40億ドルの予算削減になるという▼間接経費は、電気代や施設使用料、出張旅費や交通費、施設・設備の修繕費など、研究を進めるうえで必要となるものの、他の研究や事業にも関わるため、直接研究費から出せない経費を所属機関に支払うものだ。日本では、政府の競争的資金が30%に設定しているほか、民間同士では一般管理費などとして計上されている▼米国では、ファンディングエージェンシー(FA)と大学等研究機関の間で必要経費を算定し、個別に比率を設定している。NIHの場合、ハーバード大学との間では69%、イエール大学とは67・5%、ジョンズ・ホプキンス大学とは63・7%の比率が設定されている▼今回の発表が議会の承認を得て現実のものとなれば、多くの米国大学では、NIH予算の間接経費は4分の1以下になる。これにより、最先端の研究環境を毀損する可能性があるほか、留学生の受け入れや派遣などの国際頭脳循環などにも影響を与えることになりそうだ▼日本では第7期科学技術・イノベーション基本計画の検討が進んでいる。日本の間接経費は、米国の間接経費比率を参考に引き上げられてきたが、現状をかんがみれば、研究力をさらに低下させる愚策は俎上にのぼらないだろう。一方、日米間では様々な共同研究が行われている。その中には若手研究者や大学院生などの交流も含まれているが、米国で資金が不足すれば、受け入れられる若手の数が絞られたりするなどの影響も考えられる。今後の動向に注目したい。
© 2025 THE SCIENCE NEWS