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毎週金曜日発行

コラム・素領域 2025年

科学新聞の1面に掲載している『素領域』全文と、Web限定コラムをお読みいただけます。

2025年8月22日号 素領域

再生可能エネルギーの導入が世界中で盛んだが、太陽光発電は発電出力が天気や時間帯によって左右されてしまう。そのため、再生可能エネルギーの導入が進んだ現在では、季節や天候、時間帯により電力の余剰や不足が起きてしまい、火力発電の出力制御などが行われている▼それでも電力が余る状況では再生可能エネルギーの出力制御が必要になっている。そこで、こうした余剰電力を保存して不足時などにうまく利用しようという技術がい…

2025年8月8日号 素領域

国土交通省は8月1日に「令和7年版日本の水資源の現況」を公表した▼地球上には約14億立方㌔㍍の水が存在すると考えられているが、このうち淡水は2・5%程度しかない。そのうえ淡水の多くは南極や北極地域などの氷として存在し、それを除くと0・8%。そこから地下水を除いた、人が利用しやすい淡水は約0・01%(10万立方㌔㍍)しかない▼日本は世界でも降水量が多い国で、その量は世界平均の2倍ではあるが地域により…

2025年8月1日号 素領域

先日、農研機構の大豆ゲノムに関する記者会見の後、圃場ではなく一本ずつ、遺伝情報の異なる交配品種を調べれば、収量の高いものを見つけられるのではないかと思って聞いてみた。答えはノーだった。実はその研究者も世界的種苗会社に同じ質問をしてみたことがあるという▼農作物の収量には様々な要素が関わっている。例えば、さやが弾けやすいとコンバインで収穫するときに豆だけが取り残され、それだけで2割も収量が変わる。また…

2025年7月25日号 素領域

総務省情報通信政策研究所が「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」を公表した(本紙7月11日号掲載)。その中で、テレビ、新聞、インターネット、雑誌の各メディアについて、重要度と信頼度を調べた結果をまとめている▼全年代では、情報源としての重要度1位はテレビ(81・3%)で、次いでインターネット(72・9%)。新聞は46・9%、雑誌は13・4%となった。娯楽としての重要度1…

2025年7月18日号 素領域

消防庁は消防機関、医療機関および都道府県の協力で平成20年から熱中症による救急搬送人員の調査を実施。今年は5月1日~9月30日までが予定されている▼週別推移では6月9日~6月15日は966人だったが、次週の16日~22日は8603人に増加。23日~29日には4千人台まで下がるも、6月30日~7月6日には1万48人に達し、そのうち8人が死亡している。この週の発生場所の内訳をみると住宅が40・8%、道…

2025年7月11日号 素領域

少なくとも2030年までに、ほぼすべての医療機関で電子カルテを導入する。厚生労働省の「医療DX令和ビジョン2030」に掲げられた目標だ。電子カルテが全面導入され、データの標準化、集約化などができれば、患者データや治療データ、その経過などを解析しやすくなり、医療の質向上と医薬品開発などにつながる▼そうした希望のある未来が様々なところで語られる中、日本医師会の松本吉郎会長は政府の健康・医療戦略参与会合…

2025年7月4日号 素領域

日本の通信機械産業の生産状況が心配である。2024年度の国内生産額は3805億円となり、前年より2・7%減少した。15年前の10年度には1兆3384億円、11年度で1兆3416億円もあった。それが、今ではその4分の1近くまで縮小してしまった▼その背景には、携帯電話からスマートフォンへと市場が変わって、日本の携帯電話機生産が減り、海外のスマホ製品が輸入されて日本市場で伸びてきたことがある。そのため、…

2025年6月27日号 素領域

警視庁によれば昨年の水難事故は1535件で前年度と比較して143件増加し、過去10年間で最多となった。死者・行方不明者も816人と前年度から73人増加している。水難事故は昭和50年には4千5百件以上発生していたが、以降減少傾向が続いていた。一方で近年は減少が頭打ちで、ここ数年間は微増している▼発生場所は海が約46%、河川が約35%。行為別では魚とり・釣りが最も多く約23%、次いで作業中約8%となっ…

2025年6月20日号 素領域

化学同人が1951年から発刊してきた月刊「化学」が、通算889号で休刊となった。同号では、第2世代結晶スポンジ法などの化学の最前線をわかりやすく解説しているほか、化学つれづれ草、わかりやすい化学の伝え方、化合物の物語、みんなの元素学などの連載からは、科学的知見だけでなく、先達の経験など、多くのことを学ぶことができる▼インターネットの発展に伴って、論文の電子化が進み、研究者が紙の雑誌を手に取って論文…

2025年6月13日号 素領域

インターネットを利用する時に、何らかの不安を抱いている人が約7割もいるという▼総務省が5月30日に公表した「令和6年通信利用動向調査の結果」では、前年の69・2%から71・8%に増加している。内訳は、「不安を感じる」が27・8%(前年27・5%)、「どちらかと言えば不安を感じる」が44・0%(同41・8%)である▼しかも13歳から19歳で61・9%、20歳から29歳で63・8%などと、ネットに親し…

2025年6月6日号 素領域

コメを常温で保存していると虫がわいてしまうことがある。主にコクゾウムシやノシメマダラメイガなどで、コクゾウムシは赤褐色または黒褐色の3㍉㍍程度の小型の甲虫、ノシメマダラメイガは1㌢㍍程度の蛾だ。いずれもコメに卵を産み付けて食害する▼なかでもコクゾウムシの雌は穀類に穴をあけ卵を産み付けるので急に現れるように見える。15度C前後で発育し、卵から1カ月程度で成虫になる。20~30度Cの条件では2~7カ月…

2025年5月30日号 素領域

メディアやSNSなどから様々な情報を得て、人は行動を決めている。情報の中には間違ったものや大げさに危機感をあおるものがあり、それを信じて科学的根拠に基づかない行動をとることがある。多くの人が理解しているものの、どの程度の影響があるのかを定量的に示すことは難しい▼東京大学の古瀬祐気教授と東北大学の田淵貴大准教授らのグループは、ワクチンに関する誤情報が新型コロナウイルス感染症のワクチン接種率、死亡率に…

2025年5月23日号 素領域

情報通信の普及・振興を目的とする「情報通信月間」。今年のテーマは「デジタルで 変える社会が 未来を創る」だ。5月15日から6月15日までの期間中を中心に全国各地で180件の関連行事が開催される予定だ▼それらを通し、豊かで安心して暮らせる社会を築いていく上で大きな役割を果たす情報通信について、国民の理解を深めてもらう機会にするというのが趣旨である▼ところで、総務省はICT(情報通信技術)の利用者のリ…

2025年5月16日号 素領域

政府の量子技術イノベーション会議は5月9日、量子技術に係るユースケース検討会議を設置することを決めた。6月にも初会合を開催し、金融、創薬、運輸の分科会を設置して、各業界での社会実装に向けた課題と解決方策について検討する▼量子に関する国家戦略が策定されてから、5年が経過した。量子コンピューターに関する数多くの研究成果が生まれているが、量子技術の社会実装はなかなか進んでいない▼最も社会実装が進んでいる…

2025年5月2日号 素領域

年金の資金不足や地方衰退などの社会問題の背景にある、人口減少と少子高齢化が加速している▼総務省が4月4日に公表した人口推計(2024年10月1日現在)では日本の総人口は1億2380万人となり、前年より55万人減って14年連続で減少した▼日本人人口は1億2029万6000人で前年より89万8000人減り、13年連続で減少した。出生児数は71万7000人で前年より4万1000人減、死亡者数は160万7…

2025年4月25日号 素領域

毎年4月~6月は狂犬病予防注射月間で、日本では狂犬病予防法に基づき、犬の飼い主は犬に予防注射を受けさせることが義務づけられている。生後91日以上の犬を飼い始めたら30日以内、翌年以降は毎年1回、この期間中に受けさせなければならない。あわせて飼い始めは登録の義務もある▼日本国内で狂犬病は撲滅され、人への感染は1956年を最後に発生していないが、世界では清浄国の方が圧倒的に少ない。不法上陸動物や未検疫…

2025年4月18日号 素領域

トランプ米政権の歳出削減の波は、研究者の流出にもつながっている。すでに各メディアが報じているように、ネイチャーのアンケート調査で、米国の研究者の1650人中、約1200人が退職することを検討していることが明らかになった▼多くの研究者がヨーロッパやカナダに新しい職を求めているが、残念ながら、「日本を移転先に」と考えている研究者は少ない。こうした動きに対して、関係者の一部は「日本に優秀なアメリカの研究…

2025年4月11日号 素領域

AI(人工知能)の導入や活用が様々な分野で加速しつつある。AIとロボットを融合させたマシンの開発も進んでいる▼近年はChatGPTの登場により、AIの開発がさらに加速している。AIエージェント(自律型AI)や、それが連携したマルチエージェントのような技術の開発も行われている▼こうした技術や、それを使ったAIロボットなどの開発が今後さらに進むと、将来はどういうことになっていくのだろうか。人間同様に、…

2025年4月4日号 素領域

気象庁地磁気観測所は地球内外の空間を構成している巨大な地磁気の状態と変化を高い精度で定常的に観測している。1913年から現在まで茨城県石岡市で活動を継続し、データは防災等の研究開発に用いられている▼もともとは国際的な地球観測事業「第1回極年観測」のためフランス政府から要請され、日本政府が現在の東京都港区赤坂に臨時の観測所を設け1883年に観測を開始した。その後、東京の発展や地磁気を観測する上で障害…

2025年3月28日号 素領域

先日、伸び切ってしまった髪を切るため、近所の理髪店に行った。出てきたのは、72歳のご高齢ながら楽しい雰囲気が感じられ、カットの技術も優れている男性だった。いろいろと話をしていると、最近、6カ所目のがんが見つかったという。これまで10年以上、様々な抗がん剤治療や放射線治療、外科手術を行ってきたが、今回は緩和ケアに切り替えて、治療はしないのだと話す▼これまでの治療は非常につらかった。医者は生存期間が長…

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