科学技術の進歩に寄与し
豊かな社会発展に貢献する
唯一の専門紙です。
毎週金曜日発行

コラム・素領域 2025年

科学新聞の1面に掲載している『素領域』全文と、Web限定コラムをお読みいただけます。

2025年5月16日号 素領域

政府の量子技術イノベーション会議は5月9日、量子技術に係るユースケース検討会議を設置することを決めた。6月にも初会合を開催し、金融、創薬、運輸の分科会を設置して、各業界での社会実装に向けた課題と解決方策について検討する▼量子に関する国家戦略が策定されてから、5年が経過した。量子コンピューターに関する数多くの研究成果が生まれているが、量子技術の社会実装はなかなか進んでいない▼最も社会実装が進んでいる…

2025年5月2日号 素領域

年金の資金不足や地方衰退などの社会問題の背景にある、人口減少と少子高齢化が加速している▼総務省が4月4日に公表した人口推計(2024年10月1日現在)では日本の総人口は1億2380万人となり、前年より55万人減って14年連続で減少した▼日本人人口は1億2029万6000人で前年より89万8000人減り、13年連続で減少した。出生児数は71万7000人で前年より4万1000人減、死亡者数は160万7…

2025年4月25日号 素領域

毎年4月~6月は狂犬病予防注射月間で、日本では狂犬病予防法に基づき、犬の飼い主は犬に予防注射を受けさせることが義務づけられている。生後91日以上の犬を飼い始めたら30日以内、翌年以降は毎年1回、この期間中に受けさせなければならない。あわせて飼い始めは登録の義務もある▼日本国内で狂犬病は撲滅され、人への感染は1956年を最後に発生していないが、世界では清浄国の方が圧倒的に少ない。不法上陸動物や未検疫…

2025年4月18日号 素領域

トランプ米政権の歳出削減の波は、研究者の流出にもつながっている。すでに各メディアが報じているように、ネイチャーのアンケート調査で、米国の研究者の1650人中、約1200人が退職することを検討していることが明らかになった▼多くの研究者がヨーロッパやカナダに新しい職を求めているが、残念ながら、「日本を移転先に」と考えている研究者は少ない。こうした動きに対して、関係者の一部は「日本に優秀なアメリカの研究…

2025年4月11日号 素領域

AI(人工知能)の導入や活用が様々な分野で加速しつつある。AIとロボットを融合させたマシンの開発も進んでいる▼近年はChatGPTの登場により、AIの開発がさらに加速している。AIエージェント(自律型AI)や、それが連携したマルチエージェントのような技術の開発も行われている▼こうした技術や、それを使ったAIロボットなどの開発が今後さらに進むと、将来はどういうことになっていくのだろうか。人間同様に、…

2025年4月4日号 素領域

気象庁地磁気観測所は地球内外の空間を構成している巨大な地磁気の状態と変化を高い精度で定常的に観測している。1913年から現在まで茨城県石岡市で活動を継続し、データは防災等の研究開発に用いられている▼もともとは国際的な地球観測事業「第1回極年観測」のためフランス政府から要請され、日本政府が現在の東京都港区赤坂に臨時の観測所を設け1883年に観測を開始した。その後、東京の発展や地磁気を観測する上で障害…

2025年3月28日号 素領域

先日、伸び切ってしまった髪を切るため、近所の理髪店に行った。出てきたのは、72歳のご高齢ながら楽しい雰囲気が感じられ、カットの技術も優れている男性だった。いろいろと話をしていると、最近、6カ所目のがんが見つかったという。これまで10年以上、様々な抗がん剤治療や放射線治療、外科手術を行ってきたが、今回は緩和ケアに切り替えて、治療はしないのだと話す▼これまでの治療は非常につらかった。医者は生存期間が長…

2025年3月21日号 素領域

会社で使っているパソコンに、利用もしていないのに、金融機関や通信事業者、ネット通販会社などを装った不審なメールが最近多く届くようになった。かなり以前からあったが、減ったなと思っていると再び増える。どうも周期的に繰り返して送られてくるようだ。パソコンだけではない。スマホにもそうしたメールや電話が着信する▼自宅の固定電話にも詐欺まがいの怪しげなセールスや勧誘などの電話がかかってくる。自分のメールアドレ…

2025年3月14日号 素領域

緑内障は不可逆的な視力障害につながる可能性のある進行性の視神経損傷を特徴とする眼疾患で、最新の統計では日本の中途失明の原因の第1位であることがわかっている▼慢性緑内障には眼圧の相対的上昇が関わるが、正常眼圧の場合も多く、障害は数十年という長い時間をかけて徐々に進行する。ほとんどの場合片目だけに起き、初期には視野の欠損は小さい。通常、人は両眼で物を見ることから視野異常が補われて気づかず、潜在的な罹患…

2025年3月7日号 素領域

先日開かれた、研究大学コンソーシアムシンポジウムの中で、山本進一記念賞の授賞式が行われた。記念賞は、京都大学学術研究展開センター(現・総合研究推進本部)、表彰委員会特別賞は、人文・社会科学系URAネットワークと、筑波大学研究戦略イニシアティブ推進機構研究マネジメント室に授与された▼いまでは定着しているURAだが、導入当時は、その役割や位置づけが理解されなかった。故・山本進一博士は、名古屋大学、岡山…

2025年2月28日号 素領域

今、アメリカのトランプ大統領が世界を困惑させている。ウクライナとロシアの停戦協議、イスラエルとパレスチナの和平案発表、関税引き上げなど様々である▼強いアメリカを取り戻すためだというが、自国のことしか考えない理解困難な行動に思える。今の世界情勢、とりわけ市場開放やグローバリゼーションは、アメリカが力を入れて進めてきたことである▼アメリカ経済にかつてのような勢いがなくなったといっても、今でもコンピュー…

2025年2月21日号 素領域

東京タワーは東京都港区に電波塔として1958年に竣工し、自立式鉄塔としては2020年に東京スカイツリーに抜かれるまで日本一の高さを誇った。夜にはライトアップされた美しい姿を見ることができる▼定番のライトアップ(ランドマークライト)は180個のライトが使われ、夏バージョン(7~9月)と冬バージョン(10~7月)があり、夏は白、冬はオレンジを基調とした種類の異なるランプに変えられている。19年10月か…

2025年2月14日号 素領域

米国国立衛生研究所(NIH)はX(旧ツイッター)上で、各研究機関が政府に請求できる間接経費の上限を一律15%にすると発表した。これにより年間40億ドルの予算削減になるという▼間接経費は、電気代や施設使用料、出張旅費や交通費、施設・設備の修繕費など、研究を進めるうえで必要となるものの、他の研究や事業にも関わるため、直接研究費から出せない経費を所属機関に支払うものだ。日本では、政府の競争的資金が30%…

2025年2月7日号 素領域

インターネットやSNSの普及で日々の生活や仕事などの利便性は向上した。一方、SNSにおける偽情報や他人への誹謗中傷などの拡散、WEBやメールでのウイルス感染、詐欺・迷惑広告などが日常的に起きており、今や深刻な社会問題になりつつある▼背景にはスマホの速すぎる普及・発展があるように思う。総務省の令和5年通信利用動向の調査結果(令和5年8月末調査)によれば、世帯のスマホ保有率は90・6%である▼個人では…

2025年1月31日号 素領域

生活習慣病は食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群として定義され、かつては成人病とよばれていた。1996年12月に成人病に変わる新たな疾患概念として生活習慣病の呼称を導入。厚生労働省は2009年まで毎年2月1日から7日までの1週間を生活習慣病予防週間として定め、この知識の普及啓発活動を行っていた。10年からは毎年9月の健康増進普及月間として実施している▼現…

2025年1月24日号 素領域

広辞苑によると、会議とは「会合して評議すること。何かを決めるため集まって話し合うこと。その会合」と定義されている。第7期科学技術・イノベーション基本計画を策定するための会議が、内閣府に設置された基本計画専門調査会だが、どうも違和感がある▼メンバーは、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の有識者議員と、京都大学の内田由紀子教授、中外製薬の大内香統括、豊橋技術科学大学の小野悠准教授、エムスクエ…

2025年1月17日号 素領域

昨年11月に防災庁設置準備室が内閣官房に設置された。石破茂首相が目指す防災省創設実現へ向けて第一歩を踏み出した形だ。2026年度中の発足を目指すという▼地震、津波、土砂崩れ、火山噴火、豪雪、台風など日本は世界有数の災害大国である。最近では昨年1月の能登半島地震、9月の石川県輪島市の豪雨がある。東海から東日本を襲った、19年10月の台風19・20・21号の被害も大きかった▼さらには東日本大震災や熊本…

2025年1月10日号 素領域

ギリシャ神話の医神アスクレピオスは蛇が巻き付いた杖を持つ。「アスクレピオスの杖」は医療や医学の象徴とされ、WHOのシンボルマークにも使われている▼蛇咬傷は多くの熱帯~亜熱帯地域の公衆衛生問題だ。世界中で毎年5百万人以上が蛇にかまれ、8~13万人が亡くなると推定されている。WHOは2017年、顧みられない熱帯病(NTDs)の1つに蛇咬傷を追加した▼蛇毒の致死的特性は分子量の小さい特定のポリペプチドに…

2025年1月1日号 素領域

明けましておめでとうございます。2025年の干支は乙巳(きのとみ)、動物ではヘビとなります。過去の乙巳の年には大きな変化が起こりました。例えば、中大兄皇子と中臣鎌足が蘇我入鹿を暗殺した乙巳の変が起こり、天皇中心の国づくりの基礎がつくられた645年。平家が壇ノ浦で敗れた1185年。近年では日露戦争が終結した1905年も乙巳の年です▼日本の研究の状況を見ると、一部のスター研究者は光り輝いていますが、多…

  • デジタル版・SNW購読募集
  • 202112-202208日本分光PR-1s/PR-1w
  • 202112-202208日本分光FT/IR-4X

コラム・素領域 アーカイブ

  • 202104-06_サイエンスジャパン
  • カイロジャーナル
THE SCIENCE NEWS
  • facebook
  • twitter
  • Google +
  • はてなブックマーク
  • LINE
  • 購読申込
  • メール