科学技術の進歩に寄与し
豊かな社会発展に貢献する
唯一の専門紙です。
毎週金曜日発行

TOP > コラム・素領域一覧 > 2019年12月20日号

コラム・素領域

2019年12月20日号

素領域

令和元年度補正予算案が閣議決定された。通常国会冒頭で審議され、決定されることになる▼今回の補正の目玉の一つがムーンショット型研究開発と創発的研究だ。ムーンショットでは、農研機構に50億円、AMEDに100億円の基金が設置され、今後の研究開発に使用される▼一方、創発的研究はJSTに500億円の基金が造成される。若手研究者を対象に3年間にわたって延べ700人程度採択し、年間700万円程度の予算を原則7年、最長10年支援する。かつて1研究室に配分されていた基盤校費に相当する金額だ▼運営費交付金が削減され続けた結果、競争的な研究資金が獲得できる段階の研究を行うようになり、基礎的で挑戦的な研究はできなくなった。また旭化成のような挑戦的な研究を支援する企業も少ない。こうした状況が続けば、21世紀になって続いているノーベル賞をはじめとする画期的な成果は生まれにくくなるだろう▼創発的研究はこうした状況を打破する一手だと期待されるが、どのように評価して人を選ぶのかが非常に重要なポイントになる。論文や引用数など定量的な指標ではなく、より定性的な目利きをしなければ、挑戦的な研究は選べないからだ。もちろん、研究や研究者の評価というものは、創発的研究だけでなく、基本的な研究システムの根幹である。研究者コミュニティだけでなく、政策立案者・評価者にも、目利き力が求められている。令和2年を良い年にするためにも、システム全体を俯瞰しつつ部分最適ではない評価を行う取り組みが必要だ。

  • facebook
  • twitter
  • Google +
  • はてなブックマーク
  • LINE
  • Mail
THE SCIENCE NEWS
  • facebook
  • twitter
  • Google +
  • はてなブックマーク
  • LINE
  • 購読申込
  • メール