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コラム・素領域

2020年7月17日号

素領域

新型コロナウイルス感染症(COVID19)の流行は、日本の感染症に対する体制が不十分であることを明らかにした。無症状患者の把握や対応、ウイルス検査と保健・医療の現状分析と必要な体制の整備、感染経路対策から、社会・経済的影響への対策と人々のストレスへの対応、誹謗中傷・差別などといったものまで幅広い課題が顕在化した▼政府は首相を本部長とする対策本部を設置し、専門家会議の意見を取り入れながら対策を進めた。しかし、国内初の感染者報告が1月16日、大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号での検疫が2月3日であるのに、専門家会議の設置が2月14日というのは遅すぎた。台湾は、1月11日の最初の感染者報告の前、5日には専門家会議を立ち上げている。また臨時休校要請など、専門家会議と政府との足並みの乱れもあった▼そこで日本学術会議は、内閣府に常設の組織として感染症予防・制御委員会(仮称)を設置し、平時から学術的・専門的知見に基づいて国民への保健・医療提供、保健・医療関係者等の安全の確保などの現状を検討し、その結果と科学的知見を踏まえて、公正中立な立場で必要な施策を策定し、内閣に助言等を行うべきだとする提言を公表した▼感染症委員会が提示する案を基に、内閣が具体的な対策を政策的判断で決定し、内閣の責任において一元的に感染症対策に当たる。また都道府県知事に可能な限り裁量権を与え、地域の実情に応じた柔軟な対策を実施する。そして都道府県にも、都道府県知事に助言を与える専門家の常設組織を設置する▼感染症対策アプリで不具合が見つかるなど、政府の対策にはいまだに課題が多い。早急に幅広い分野の専門家集団による科学的助言とそれを実行するための各省庁の枠を超えた体制整備が必要だ。

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