第6期科学技術・イノベーション基本計画のパブリックコメントで739件の意見が寄せられた。基礎研究や学術研究の長期的な支援が必要だとするもの、博士課程学生の環境の充実やキャリアパスに関するもの、大学等研究機関と民間との共同研究を進めるための環境整備や支援などを求めるものなどが多かったという▼パブリックコメントは、国民の意見を聞く機会として、最近では当たり前になっているが、その意見が実際の政策に反映されるケースはあまり多くない。意見が一方的すぎる、すでに検討して織り込み済み、現実的ではないなど、様々な理由があげられるが、一部には「大変なのであまり対応したくない」という受け止める行政側の問題もある▼例えば、行政改革の一貫として、運営費交付金の削減が国立大学や独立行政法人等で行われてきたが、熾烈な国際競争に打ち勝っていくためにはマイナスにしかならない政策だった。しかし現実には運営費交付金は削減され、日本の競争力は大きく毀損してしまった。もちろん、そうした環境の中で生き残るために各機関が努力をして改革を進め、結果として強くなった部分もある。しかし本来、改革を進めるのであれば、真正面から抱えている課題に向き合い、検討して解決策を見つけるべきであるが、実際には「兵糧攻め」にして、考えることは丸投げするという手法を使ってきた。学術会議の会員任命拒否問題は「学術会議に課題がある」という政治的な問題提起を人事で促すという、非常に下品な手法で行われた。問題があるのであれば、真正面から建設的に議論すべきだ▼現在、学術会議では4月の総会で自らの改革案を取りまとめるための議論が行われているが、会員任命拒否問題は喉に刺さった小骨のようになっている。政権トップが理不尽な人事でアカデミーに介入するという姿は、国際的に見て、非常に問題があると言わざるを得ない。早急に解決することが必要だ。
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