今年のノーベル物理学賞を、米プリンストン大学の眞鍋淑郎氏が受賞した。CO2の濃度上昇が地球表面温度の上昇につながることを証明し、現在の気候モデル開発の基礎を築いた功績が認められたものだ▼気候学分野からの初のノーベル賞受賞ということだが、その研究自体は1960年代に、眞鍋氏が米国へ渡って成し遂げた研究成果だという。実に半世紀以上も前のことである▼しかし、地球温暖化問題に対して世界全体が取り組み始めたのは、それからずっと後である。国連の下で大気中の温室効果ガス濃度を安定化させるための「気候変動に関する国際連合枠組条約」が採択されたのは92年である▼さらに、この条約に基づいて気候変動枠組条約締約国会議(COP)が始まったのは95年だ。ところが、COP開始からさらに30年近く過ぎた今日でも、まだ地球全体のCO2濃度は上昇し続けている▼気象庁のデータ・資料によれば、温室効果ガス世界資料センターの解析によるCO2の世界平均濃度は2019年で410・5ppmで、前年度より2・6ppm増えた▼工業化(1750年)以前の平均的な値とされる278ppmと比べて48%の増加だという。これまでの半世紀、世界は、そして人類は、温暖化問題に対し、本当に真剣に向き合って取り組んできたのだろうか▼眞鍋氏のノーベル賞受賞の報に接して、改めて温暖化問題について考えを深くさせられた。
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