6月末から夏の太平洋高気圧が北への勢力を強め、北海道を除き梅雨前線は活発にならなかった。気温の上昇も著しく、東京都心では観測史上初めて6月に2日連続の猛暑日を記録した▼続く暑さの影響で6月27日には東京電力の管内で初めて「電力需給ひっ迫注意報」が発令。同注意報は資源エネルギー庁が前日時点で電力の広域予備率が5%以下となる見通しの場合に前日16時を目途に出されるもので、3%以下の見通しの場合は警報になる。さらに同日、関東甲信は観測史上最も早い梅雨明けを迎えることになった▼梅雨時期の降水量の低下は渇水を招く。直近の例では1994年渇水がある。同年は梅雨前から少雨傾向で梅雨時の降水量が平年の半分以下、その後に高温が継続した。水道水の断水や減圧給水などにより一度でも影響を受けた人は全国で約1600万人に及び、約1400億円の農作物被害が生じた▼現時点では首都圏の水源である利根川水系のダム貯水量は平均値程度を維持している。しかし兵庫県、佐賀県、四国では既に取水制限が始まっている。四国では5つのダムで取水制限が行われ、特に愛媛県と徳島県を流れる吉野川水系の富郷ダム、柳瀬ダム、新宮ダムでは合計貯水量が20%まで低下し厳しい状況が続いている▼新型コロナウイルスの流行は一定の落ち着きが見られるものの、手洗い・うがいはしたいし、熱中症を避けるために冷房も必要だが電力はひっ迫と暗澹とした気持ちになる。しかし人間であるからにはこの環境に適応する手段を探れると期待したい。水を大切に。
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