理研の雇い止め問題に端を発して、全国の大学・公的機関で約3000人が今年度末には解雇されることが明らかになっている▼改正労働契約法により、任期付き雇用は5年を上限として、5年を過ぎた場合には常勤雇用の権利が労働者に与えられることになった。ただし、研究者の仕事は5年で成果を出すことは難しいため、例外として10年間という猶予が与えられた。その最初の適用が今年度末だ▼民間企業では約5年前、同じことが起こっている。転職した人、常勤契約社員や正社員になった人、さらに派遣社員の一部は派遣会社の契約社員となった。その中で派遣社員の場合、仕事があるときだけ一定の報酬が得られる歩合制の契約社員というかたちでの労働契約が結ばれた。違法ではないが、雇用安定という法の趣旨には反する契約だ▼研究者、特に学術研究(自らの内在的欲求による研究)を行う研究者は、自由を与えられる代わりに世界の中で競争をしなければならない。博士号取得から約10年程度でポストを得られなければ、常勤の研究職に就けないドイツはその前提を理解している▼日本の場合、大学・公的機関の研究開発費が伸びない中で雇い止めという判断は致し方ない面もあるが、3000人規模での解雇となると、その影響は大きい。解決策としては、米国のように競争的資金から研究代表者の人件費を支出し、それを前提として雇用する制度の導入、10年間程度の人件費を国が支出し、その代わり、国際公募を行うことでチャンスを与える方法などが考えられる。いずれにしろ、一定の予算と制度改正を行うための時間、そして、一定レベルでの競争は必要になるだろう。
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