本号は今年の最終号である▼今年を振り返れば3年目となった新型コロナウイルス感染は、収束の見通しが立たないまま、また1年が過ぎ、いまだに不自由、不便な生活をさせられている▼2月にはロシア軍がウクライナに侵攻し、その後戦争は長引き、多くの死傷者を出す悲惨な事態が続いている▼さらに、その影響は世界にも及び、食料やエネルギーの供給が滞り、食料品や電気、燃料の値上げなど、経済にも打撃を与えている。そして、北朝鮮による度重なるミサイル発射実験などの軍事的挑発も勢いづいている▼中国の軍事力拡大と台湾統一へ向けた軍事的圧力強化などもあり、重苦しさを増す世界情勢となっている。兵器開発には、先端科学技術が盛んに導入されている▼科学技術の進歩が人類の幸福だけでなく、軍事力拡大につながっていることを、改めて考えさせられた1年のように思う。こうした、日本を取り巻くロシアや北朝鮮、中国の軍事的圧力強化の動きは、日本の安全保障問題に大きな影響を与えている▼現政権は防衛力強化をはかるため、防衛予算の大幅拡大へ向けた議論を進めており、世論もこれを支持する方向へ傾きつつある。また、そうした中でアカデミアも、科学技術のデュアルユース問題を再燃させている▼日本は先の大戦で敗れ侵略者として裁かれ、戦後は戦争を放棄した。その日本が、今度は周辺国の軍事的圧力強化で軍拡への道を強いられている▼先の大戦と背景や状況は異なるが、戦争への道はこんな形で進んでいってしまうのだろうか。
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