米国はデジタル先進国なので、仕事に紙を使うことは少ないのかと思っていたら、そうでもないらしい。ICTの業界団体である情報通信ネットワーク産業協会が公表した米国におけるファクシミリの利用調査結果が興味深い▼有職者を対象に業務での利用状況を調査した結果で、それによると7割の人がいまでもファクシミリを利用しており、紙ベースのワークフローになっているという▼この結果は、同じく同協会が先だって公表した日本での利用調査結果の6割よりも多く、米国では業務でのファクシミリ利用が定着している実態がうかがえた▼いま日本では、他の先進国よりデジタル化が遅れているという危機感から、国が先頭に立ってデジタル化推進に躍起になっている。デジタル化で行政や民間の様々なサービスが受けられるようになれば、確かに便利になるものはある▼だからといって一足飛びにデジタル化を急ぐ必要が、いま本当にあるのか。今回のファクシミリの利用調査結果は、その答えが「否」といっているように思える。ファクシミリを使い続ける理由は何か▼米国調査で一番多い回答は「確実に届くから」であった。日本の場合は「簡単に送受信できるから」が一番多い。ほかに「手書き原稿が送れる」「印刷された受信文書をそのまま利用」などの回答も多かった▼互いのビジネス事情は異なるが、米国も日本も紙の良さ、デジタルの良さをうまく活かして仕事をしているというのが実情なのではないか。ICT先進国の米国でさえ、紙ベースでまだ仕事をしているのだから焦る必要はないのかも▼しっかりと、100年先を見据えた科学技術、情報通信、経済産業、教育などの政策を進めれば、日本再興につながると思う。
© 2024 THE SCIENCE NEWS