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コラム・素領域

2023年10月13日号

素領域

2023年ノーベル化学賞の受賞内容が事前に漏れた。現地時間の午前7時、王立科学アカデミーから地元メディアに一斉メールが配信され、そこには授賞対象が量子ドットであることや受賞者3人の氏名などが記載されていた。当初、午前10時にノーベル化学委員会が開かれ正式決定し、午前11時45分に発表される予定だったのだが、事前に地元の有力紙、ダーゲンス・ニュヘテル紙などが速報として報じた▼受賞者の情報が事前に報じられたことは以前にもあった。2010年の生理学・医学賞をロバート・エドワーズ博士が体外受精の技術開発で受賞したときのことだ。ただし、委員会側からではなく、地元メディアが選考関係者に取材した結果によるものだった▼いずれにせよ、今回のことはノーベル賞という伝統ある賞にケチを付けるかたちになった。同時に、情報管理の重要性を世界中に改めて問いかけた。流出の経緯は不明だが、IT化によって、情報がより手軽に管理できるようになったことで、人間の危機意識が低下したことが背景にあるものだと推察される▼日本でも情報管理の動きは強まっている。例えば、経済安全保障の観点から、大学等の研究機関でも安全保障輸出管理が厳しくなり、一部の留学生については大学本部を通じて経済産業省の許可が求められ、共同研究の手続きも煩雑になった。人・時間に加え、費用の面でコストがかさむため、各大学とも捻出に苦心している▼知り合いの会社がランサムウェアでシステムが停止し、莫大な損害を被った。システム担当者や経営者の危機意識が不十分で、必要な投資もしていなかったためだ。政府には、転ばぬ先の杖として、効果的な投資ができる環境を整える必要がある。

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