米国が先月、核融合エネルギーに関する国家戦略を策定したことで、日本、イギリス、米国の3カ国における国際競争が本格化することになる。高市早苗科学技術担当大臣は「我が国も国家戦略に基づく取り組みを加速するために、国家戦略の改訂に向けた議論を8月から開始します」と発表。2030年代の発電実証の達成に向けて必要な国の取り組みを含めた工程表の作成、小型化・高度化などの新興技術の活用による研究開発ロードマップの策定、国際標準化やサプライチェーンの発展支援、科学的に合理的で国際協調した安全確保の基本的考え方の策定などが検討される▼日本はこれまでITERで使われているトカマク型、核融合科学研究所で行っていたヘリカル型、さらにレーザー核融合などで世界の研究開発をリードしてきた。一方、米国などのベンチャー企業では、逆転磁場配位型(FRC)や磁化標的核融合(MTF)など、新しい方式での開発も進められ、また巨額の資金も集まっている▼日本の強みは、大学・研究機関だけでなく、多くの中小企業にも蓄積されてきた技術とノウハウだ。プラズマでの核融合の場合、方式が多少違っても応用できる。またムーンショット(MS)目標に核融合を入れたことで、新たな核融合技術の開発にも挑戦できるようになっている▼政府はこうした中小企業をSBIR制度なども活用しながら支援することを考えているが、そうした会社にはどういう政府資金をどう活用したらよいのかというノウハウが足りない。またMSに参加する研究組織やベンチャーとノウハウを持つ中小企業とのつながりも不十分だ。今後、コーディネート機能の充実が鍵になるだろう。
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