医薬品の供給不足が続いている。日本医師会の松本吉郎会長は4月の健康・医療戦略参与会合の席上、経済安全保障推進法でβラクタム系抗菌薬など11物資が特定重要物資として指定されているが、日常診療で頻用する医薬品が供給不足となっており、対応が必要だと訴えた。議長を務める高市早苗経済安全保障担当相は、可及的速やかに対応するよう指示を出した▼その後、高市大臣のもとを厚生労働省幹部が訪れ、後発医薬品への対応について報告書をまとめると共に、咳止めと去痰薬については補正予算で製造支援などを進めていることを説明した▼日本製薬団体連合会の調査によると、全1万6984品目のうち、10・3%が供給停止、出荷制限などを含めると23・9%が供給不足となっている。ウクライナ情勢などによる原料価格の高騰に円安も加わって、原料が確保できたとしても、薬価で値段が決まっているため、生産すればするほど赤字になるといういびつな構造がこうした状況を作っている▼経済安全保障推進法に基づく特定重要物資の指定は、国民の生存に必要不可欠、外部に過度に依存、供給途絶等の蓋然性、そして必要性によって判断される。一方、医薬品は国民の生命や健康に関わる重要な物資であり、その原料の海外依存率は非常に高い。高市大臣は「これまでも累次にわたって厚生労働省に対して、サプライチェーン調査をやり直してほしい、本当に抗菌性物質製剤だけで大丈夫なのかということは申し上げてきています」と話している▼医薬品供給不足を解消するためには、サプライチェーン調査に基づく特定重要物資への指定と共に、薬価制度の見直しが必要であろう。
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