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コラム・素領域

2026年5月29日号

素領域

2023年にオランダでAIチャットボット「イライザ」との会話にのめり込んでいた男性が自殺し、社会に大きな衝撃を与えた。昨年も米国で10代の子供2人が対話型AIとのやり取りの後に自殺したとして、訴訟が起こっている。またAIに対して恋愛感情を持つ人も一定数いることが国内外の調査で明らかになっている▼こうした問題の原因の一つは、対話型生成AIの持つ「迎合性」にあるという。あたかも価値観が同じように振る舞うことで、恋愛感情を持ってしまったりマイナスの感情を増幅させてしまったりする▼英国エディンバラ大学哲学科のシャノン・ヴァロー教授は、「AIは鏡である」と表現している。大規模言語モデルは、過去の膨大な情報を蓄積し、その中から最適なものを組み合わせて出力するためだ。その中で人間らしさを失わないためには、「AIのある世界で人間は何になれるのか」を心にとどめておくことが大切だという▼人間を人間たらしめることの一つが、新たな価値を見いだし、新たな何かを作り上げるという点だろう。そのためには、まず自らの価値観を確立し、その上で様々なことを学び、挑戦し続けることが大切になる▼しばしば、基礎科学について、役に立つかどうかといった議論が行われることがあるが、そうした画一的な価値観こそが創造性を阻害してしまう。科学の再興を進める上でAIの活用は欠かせないが、そのためには仕組みを理解することが前提だ。リテラシー教育とともに、挑戦する気持ちを邪魔しない環境が必要になる。同時に、価値観を形成する初等中等教育や家庭教育の重要性が再認識される。