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2018年11月6日 税金の投資効率を最大化するために

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検証可能な十分な根拠を示さないままに、国立大学の活動について断定的な国際評価を行い、国立大学、さらには我が国の高等教育および科学技術・学術の将来の在り方に関わる極めて重要な政策について、短期間で方向付けを行おうとすることには、重大な危惧を感じざるを得ない。

10月24日の財政制度審議会における財務省の主張に対して、国立大学協会の山極壽一会長(京都大学総長)が出した声明に付記された文書の一部である。

毎年この時期になると財政制度審議会では、各分野の財政支出について問題点を指摘し、予算折衝における減額査定のための種をまいている。

24日の審議会では、各種データを示しながら「諸外国では、運営費交付金に依存しなくても成果をあげる大学は多い」「運営費交付金は成果に応じて配分されない」といった問題点を指摘し「我が国の国公立大学への公的支援については、主要先進国の国公立大学の中でトップクラスにある。そうした中で、国立大学法人間の運営費交付金等については、社会のニーズに応じた教育水準・グローバルレベルでの研究水準の向上が図られるよう、複数併存・重複する評価制度を整理統合し、教育面では例えば就職率・進学率など、研究面では例えば教員一人当たりトップ10%論文数・若手教員比率・外部資金獲得額などのアウトカムあるいはそれに類する共通指標を用い、相対評価かつ厳密な第三者評価を実施するとともに、これらの教育・研究の質を評価する共通指標に基づいて配分する割合をまずは10%程度にまで高めることが必要ではないか」と主張している。

これに対して声明では、「この方向性は、国立大学の経営基盤を一層不安定で脆弱なものとするとともに、中長期的な戦略に基づく積極的な改革の取り組みを困難にするだけでなく、財政基盤の弱い大学の存在自体を危うくし、ひいては我が国の高等教育および科学施術・学術研究の体制全体の衰弱化さらには崩壊をもたらしかねないものであって、国立大学協会としては強く反対せざるを得ない」と反論。

外部資金をはじめとする財源の多様化が諸外国の主要大学を比べて不十分という指摘については、法人化以来の各大学の努力の結果、競争的資金、産学共同研究等による受入額、寄付金等の外部資金はいずれも大幅に増加し、平成28年度には約3200億円と法人化当時から倍増していることを示した上で、大学への投資や寄付を促進するために諸外国の制度を参考にした税制改正などの環境整備を求めている。
また、「高等教育部門におけるトップ10%論文1件あたりの研究開発費総額を比較すると、日本とドイツで1.8倍のコスト差があり、日本の論文生産性が低い」という指摘については、国公私立大学全体を比べると日本の研究開発費総額は多くなるが、政府の負担額を見ると、日本は全体の約52%の109億ドル、ドイツは約83%の176億ドルであり、ドイツがはるかに大きい。日本の大学のトップ10%論文数2985本のうち、約76%の2277本は国立大学が生み出しているため、国立大学に限定してドイツと比べると、論文1件あたりの研究開発費はドイツの370万ドルに対して、日本の国立大学は420万ドルで、その差は1.1倍になるとデータで反証。危機感は共有しているが「ことさら極端な差を強調することは大きな疑義を感じざるを得ない」としている。

財務省と国立大学協会の主張を見てみると、今回は国大協の方に分がありそうだ。何かを主張しようというとき、根拠となるデータを都合よく使うというのは基本的な方法論であり、大学の授業で行うディベートではよくやることだが、国の将来を考える際には、データは公平・公正に使わなければならない。また財務省も、税金の投資効率を目標に対して最大化するという本来のミッションに立ち返って、現在のルールに固執するのではなく、新たな予算執行の仕組みや規制の緩和も含めて、日本という国が良くなるために何が最適なのかをもっとよく考えるべきであろう。

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