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コラム・素領域

2017年11月24日号

素領域

もうかれこれ30年以上前になろうか、当時の文部省宇宙科学研究所に大林辰蔵(故人)という名物教授がおられた▼大林教授は日本の宇宙開発の先駆け的な存在で、スペースシャトルを利用し、東京の空にオーロラをつくろうという実験を計画し、実行した。成否はともかく、宇宙に対するロマンを大いにかき立てられたものだ。そして今度は2019年の夏、夜空に「人工の流れ星」を輝かせようとする世界で初めての実験を民間企業が進めるという▼この実験では、人工衛星から金属球を打ち出して流れ星のように見せる。本物の流れ星よりも速度が遅く、地上で見られる時間は長い。狙った地点の半径100㌔㍍の範囲で、高度60㌔㍍付近が最も輝き、夜空が暗ければ10秒以上見えるそうだ。その後、金属球は地上に落ちる前に大気との摩擦で燃え尽きてしまう▼そういえば大林教授によると、学生に月に行きたいかと問うと多くが行きたいと答えたが、住みたいかと問うと住みたいと答えた学生はほんのわずかにまで減ってしまったそうだ。教授いわく「月には何もないことを知識として知っているからだが、何もないからこそ、そこに夢やロマンを感じる人が一握りでもいれば、宇宙開発は大いに推し進められる」と力説していたのを思い出した▼この人工の流れ星実験に、科学者だけでなくとも何かロマンを感じるのではないか。もしその中から新たな人材が発掘できれば、その意義は大きい。

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