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コラム・素領域

2017年11月10日号

素領域

オーストリアと聞くとどういうイメージを持つだろうか。ウィーンであればオペラやハプスブルク家の宮殿、アルプスにいけばスキーをはじめとするウィンタースポーツ。観光産業の印象が強いが、実は日本以上に科学技術立国なのだ▼日本政府はこの十数年、政府研究開発投資をGDP比1%にすることを目指して、研究開発投資を増やすと標榜してきた。しかし、日本全体の研究開発投資は3・56%と大きいが、政府研究開発投資は地方分を入れても約0・76%といまだ達成できていない▼オーストリアの研究開発投資は、全体ではGDP比3・14%だが、内訳を見ると連邦政府・地方政府の負担分は1・09%、民間が2・04%と政府負担は日本よりも大きい。また連邦政府と地方政府の負担割合は全体では7対1だが、州別GDP比で見ると、シュタイアーマルク5・16%、ウィーン3・66%、上オーストリア3・18%、ケルンテン3・15%と研究開発に熱心な州では積極的な投資が行われている▼ペニシリンは1928年にフランスのアレクサンダー・フレミング博士が発見したものだが、それを精製することに成功したのは、オーストリア人のハワード・フローリー博士とイギリス人のエルンスト・ボリス・チェーン博士である(1940年)。ペニシリン実用化は世界中に恩恵をもたらし、フローリー博士の肖像はオーストリアドルにも使われていた▼こうした背景からオーストリアには研究開発を大切にする文化がある。高等教育を含めた教育無償化を行い優秀な人材を数多く輩出するとともに、企業への優遇措置を設けることで世界360社以上の欧州における本部機能を誘致した。研究開発投資は00年から15年で62%も増加している。日本政府も科学技術創造立国を目指すのであれば、それなりの取り組みが必要だ。

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