IBMリサーチのバイス・プレジデントであるボブ・スーター氏が、商用に利用可能な汎用量子コンピューター「IBM Q」について、報道関係者などを集めて概説した▼同氏は「量子コンピューターは量子力学に基づき、量子ビット(Qビット)で計算するコンピューターである。そのため、情報をビット列で処理するクラシカル・コンピューターが解決できない問題を解くのに適している」と紹介した▼クラシカル・コンピューターは1か0、つまり1種類の状態しか計算できない。これに対し、量子コンピューターは1から0の間、つまり複数の状態を処理することができる。自然界はデジタルではないので、クラシカル・コンピューターは人類が抱える問題を扱うには適さず、量子コンピューターが必要になるという▼IBMは昨年、クラウドを通じて5量子ビットの量子コンピューターを一般公開し、続いて今年5月には16量子ビットの「IBM Q」を公開した。まだ準備段階でしかないが「この公開は量子コンピューターが商用次期に近づいていることを示唆している」とも述べた▼「IBM Q」は、世界中の誰もが無料利用できる、現在では唯一の量子コンピューターである。利用者は既に5万4000以上もいて、100万件以上の演算が行われているという▼Qビット数の増加、エラーの少ないQビットの開発、絶対零度に近い動作環境の改善など課題はあるが、2021年頃から次のアドバンテージ段階に移行するという見通しも示した▼いま、ビッグデータやクラウドがあり、AIも急進展してきた。これらと量子コンピューターがうまく結びついたら、一体何が起きるのか。温暖化問題をはじめ、人類が直面する難問に機械が有益な回答を出してくれる時代が本当に来るのかと、期待感を抱かせる話である。
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