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コラム・素領域

2017年9月29日号

素領域

65歳を過ぎると急速に記憶力が衰えてきて、最近、物忘れの多さを実感するようになった。親の顔を忘れるなどという落語に出てくるようなことはさすがにないのだが、人の顔と名前が一致せず思い出せないことが多々ある▼ところで国勢調査をもとにした推計によると、65歳以上の高齢者人口は3500万人を超えた。前年度比57万人増で、総人口に占める割合は27・7%だという。いよいよ医療や介護など社会保障制度の見直しを迫られ、高齢者にも負担が求められる時代になった。物忘れを嘆いているばかりでは生きてはいけないのかもしれない▼ただ専門家に聞くと、年をとれば物忘れは誰にでも起こりうることで、それ自体はあまり心配することではないと指摘する。そもそも記憶には、短期記憶と長期記憶があり、今まさに覚えた記憶が短期記憶で海馬に保存される▼海馬は、大脳の中心部にある記憶をつかさどる器官で、そこではエンドレステープのように瞬時に記憶されたり消去されたりして、情報が整理される。それが大脳表面の神経細胞に送り込まれてネットワークを構成して長期記憶となる▼この海馬の神経細胞にアミロイドβというゴミがたまることで細胞自体が死んだり伝達機能が低下したりすることで起こるのが物忘れである。特に新しい出来事は、ゴミのせいで覚えづらくなるようだ▼脳は何でもかんでも記憶する装置ではない。忘れることが前提で機能している。少し気になる物忘れではあるが、それもちょっとした老化現象。深刻に考えず前向きにとらえることが肝要のようだ。

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