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コラム・素領域

2019年6月21日号

素領域

茨城県つくば市で6月8日と9日に開催された「G20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合」では、人間中心の考えを踏まえたAIの原則について参加国・機関の合意がはかられた。その方向でAIの開発・利用が今後も進められてほしいと願う▼コンピューターをはじめ、最先端科学技術の導入にあたっては、明るいプラス面だけでなく、改革がもたらす暗いマイナス面があることを常に忘れてはならない▼そのことは過去の歴史が教えている。ところがそうは言っても、この光と影の問題、あるいはデュアルユースの問題は、いつの時代にも解消されないでいる。そして格差や環境破壊、公害、ときには戦争という悲劇を引き起こす原因となっている▼世界の三大発明とされる火薬、印刷、羅針盤は、15~16世紀のヨーロッパ社会に大きな変革をもたらし、発展の原動力となった。いま注目されているAIも、人類が歴史上で得た、そうした画期的な技術の部類に入るだろう▼人類はコンピューター技術を得たとき、それがいつの日にか人間を超える能力を備えるようになると予想したはずだ。それを裏付けるように、すさまじい速さで進化・普及し、人間では不可能な超高速・大規模・複雑な計算をこなし、産業や経済の発展、便利な暮らしなど、人類に恩恵をもたらしてきた▼しかし、その恩恵は全人類に及んでいるわけではない。国や地域、人々同士の格差を生み、サイバーテロのような問題も生んでいる▼AIはこれまでにない恩恵を人類にもたらすかもしれないが、逆に未曾有の不幸をもたらすかもしれない。そうならないためにも、人間中心のAIという原則に世界中が合意した茨城つくば会合の成果は喜ばしいことだ。今後は、AIを軍事に用いないという合意が世界的になされることを望む。

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