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コラム・素領域

2020年12月4日号

素領域

「虫けら」とは、小さく取るに足りない虫の意味で、転じて人を卑しめるために用いられる言葉だ▼虫にとってみれば迷惑千万なことで、「何様のつもりだ。俺たちの本当の能力を知らないくせに」と反発されそうだ。実際その通りで、人間はその能力に注目し、様々な分野に活かそうとしているのは確かである。例えば、「地上最強の虫」とも言われているクマムシ。体長はわずか1㍉程度でありながら、休眠状態になれば100度Cの高温、また極低温にも耐えられる。あるいは強い放射線を浴びても生き抜くことができるのだ▼乾燥状態というストレスを与えると、自分の体内の水分の大部分を放出し、残った数%を循環させて生き延びていく。そして再び水を与えれば復活してしまうというメカニズムだ。この性質に目をつけ、医学の分野で臓器の保存などに活かそうとしている▼また、主に北米の西海岸のオークの木に生息するコブゴミムシダマシ(体長約3㌢)もすごい能力を持つ。日米の大学研究チームがこの虫の骨格の強さを測ったところ、自分の重さの約3万9千倍の圧力に耐えられるそうだ。車にひかれてもつぶされない鋼鉄のようなボディーの持ち主だ。骨格の断面図などから左右2対の凹凸構造が見つかり、これが力をつなぎとめている仕組みで、軽くて丈夫なデザインの設計への応用が有望だという▼思いがけないところに、とんでもない能力を秘めた魅力ある虫が、まだまだこの世には存在しているに違いない。もう軽々しく虫けらなんて呼べないではないか。

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