無論、杞憂に終わったのだが、今から80年以上前、火星人が地球に攻めてくるというラジオ番組の放送を信じてアメリカの人々がパニックになるという出来事があった▼その火星に米航空宇宙局(NASA)の探査車「パーサビアランス」が日本時間の2月19日午前6時ころ着陸に成功した。人類にとって快挙といってよいであろう。探査機を火星に着陸させることは難しい。これまでロシアや欧州の機関が試みているがなかなかうまくいっていなかったことを見ればそれは明らかである▼火星は太陽系の第4惑星で、地球のすぐ外側を回る。直径は地球の半分くらいで、重力は3分の1、薄いながらも大気がある。今回のパーサビアランスが目指すところは、数十億年前に湖があったと考えられている直径45㌔㍍のクレーターの内側である▼ここには、川の流れで土砂が堆積した跡が残っている可能性がある。それだけに微生物の痕跡が残っているかもしれない。計画では、岩を掘ってサンプルを採取するほか、今後打ち上げる別の探査機を経由して土壌を持ち帰ることになっているそうだ▼いま宇宙開発のターゲットのひとつが火星である。アメリカばかりではない。ロシア、欧州、中国、そしてアラブ首長国連邦(UAE)などが続々と宇宙開発競争に入った。日本も負けているわけにはいかない。2024年に火星の衛星「フォボス」に探査機を打ち上げる計画だ。「はやぶさ2」の経験があることは心強い。29年には砂を採取して持ち帰る予定だそうだ▼「地球から人がこんなに押し寄せてくるとは」と”火星人”も驚くかもしれないが、どうか友好的であってほしい。まあ、われわれと同じような認知機能を備えた生命体が存在すればの話だが。
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