4月といえば門出の時でもある。世の中はコロナ禍で何かと制約がある中で、新たなスタートを切る人も多いことだろう▼コロナ禍といえば、アメリカで話題になったことで、心強く思う話がある。アメリカの新型コロナ感染症による死者は世界で最も多く、55万人を超えている(3月末現在)。日本の死者数は9千人弱(3月末現在)なので、人口が日本の約2・5倍としても桁違いに多いことが分かる▼このような中、アメリカで看護師志願者が増加しているというのだ。感染症の最前線で患者の治療や看護にあたる医療従事者は、感染の恐怖や不安を抱えながら勤務にあたっている。その緊迫感はいかばかりかと察せられる。アメリカでは慢性的な看護師不足で、パンデミックのさなかに医療崩壊に陥るところまで追い込まれた時期もある▼そうした苦境にあって、この1年でアメリカの大学の看護学科に入学した人の数が6%ほど増えた。日本の場合とは少し異なり、アメリカでは看護師になるためには基本的に4年制の大学卒業資格が必要となる。入学者が看護師を志した動機については、厳しい環境の中で懸命に働く姿が連日のようにマスコミに取り上げられたことが大きな刺激となったという▼また医療の最前線に立つ人の懸命な活動に対して、一般市民が称賛やねぎらいの声を送り、くじけそうな心を励ましているといった事実が志望動機を後押ししていることがあると思う。これにより看護師という職業自体が見直されたことが大きいとする見方もある。苦難に立ち向かおうとする人が増えている。頼もしい限りではないか。その挑戦を応援する気持ちを抑えることはできない。
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