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コラム・素領域

2021年8月20日号

素領域

日本の研究力低下の大きな要因の一つになっているのが、修士課程から博士課程への進学率の低下だ▼修士課程学生は優秀な先輩を見ているが、その人たちが就職先もなく、結婚もできず、いわゆる高学歴ワーキングプアになっている姿を目にしているからだ。欧米とは異なり、日本企業の多くは博士の採用に消極的である▼こうした状況を改善するため、ジョブ型雇用を進める企業と博士の就職先を確保しようという大学で構成される、ジョブ型研究インターンシップ推進協議会が発足した。大学45校、企業45社が参加し、幹事は東京工業大学、副幹事は日立製作所、事務局をアカリクが務める▼協議会では、自然科学系博士課程学生を対象とする2カ月以上の有給研究インターンシップを実施するため、企業と学生とのマッチングを行う。企業側は、ジョブディスクリプション(業務内容、必要とされる知識・能力等)を提示し、インターンシップ終了後には、学生に面談、評価書・評価証明書を発行する。大学側は、学生への周知を行い、正規の教育課程の単位科目として実施する。9月以降に試行を開始し、来年度から本格実施する。当面の目標は2023年度に年間120~240人程度だ▼学生はキャリアパスが拡がり、企業は優秀な人材をリクルートできる。成功すればメリットは大きいが、そのためには指導教員の理解が必要だ。45大学が参加といっても全学ではなく、研究科単位での参加も多い。文科省の担当者は「正規の教育課程と位置づけることで理解は得られる」というが、多くの問題は参加していない研究科にある。取り組みが成功するためには、他の政策とのマッチングが重要になるだろう。

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