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コラム・素領域

2021年11月19日号

素領域

日本のトップ大学を世界に伍する研究大学にするため、10兆円規模の大学ファンドを今年度中に造成し、運用を開始する。岸田政権が掲げる重要政策の一つだが、現場からは不満や不安の声が聞こえてくる▼小林鷹之科学技術担当相は「特定分野に強い大学、地域の人材育成や社会課題解決に取り組む大学など、様々なタイプの大学が、社会の支え、知の基盤になっている。それぞれの大学の機能を強化するため、大学振興パッケージを年内に策定する」と言うが、それでもこうした声が出てくるのは、数大学に年間2千数百億円を配分するという具体的な大学ファンドに比べ、振興パッケージの中身、特に具体的な政策が見えてこないからだ。もちろん、大学ファンドの資金配分が始まるのは早くとも2年以上先の話だが、人間の期待感や疎外感は非論理的なものだ▼一方、経済安全保障の分野では、JSTとNEDOにあわせて5000億円規模の基金を造成し、先端技術の支援を継続的に行うことが補正予算案で検討されている。量子、マテリアル、バイオなど、国際的にしのぎを削る分野が対象になる。非常に大切なことだが、萌芽的な研究に取り組む研究者からは不満の声が出てきそうだ▼こうした問題の根底には、日本にはどれだけの数の大学や研究者、高等教育の教育者、学生が必要なのか、また政府研究開発投資における基礎研究・応用研究・開発研究の割合をどのように考えるのか、競争についていけない大学は切り捨てるのか救うのかといった、国としてのそもそもの姿勢のあり方が曖昧だという問題がある。国家論としての科学・技術・イノベーションを考えてみる時かもしれない。

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