科学技術の進歩に寄与し
豊かな社会発展に貢献する
唯一の専門紙です。
毎週金曜日発行

TOP > コラム・素領域一覧 > 2022年3月25日号

コラム・素領域

2022年3月25日号

素領域

昨今、大学と企業との共同研究が増加しているが、多くの大学ではあまり儲かっていないようだ。これは政府の競争的資金と同じような経費の計算をしているためだという▼政府系資金では、直接経費+間接経費30%が研究費総額として計上される。つまり直接経費が1000万円であれば、総額は1300万円。一方、産学共同研究の場合、直接経費の中に関わる教員や学生の人件費を含めることができる。しかも教員の人件費は能力や実績に応じて高く設定することも可能だ。例えば、直接経費1000万円、教員と学生の人件費300万円とした場合、間接経費30%を加えると1690万円になる▼学生の人件費を加えるためには、大学が学生と雇用契約を結べば良いし、教員の人件費は相手の企業と相談すれば高い単価を設定できる。特に大企業の場合は、企業側の人件費が高いため交渉自体は容易だという▼最初は手間だが、後は同じような事務手続きであるため、一部の大学では既に実施されているが、多くの大学では進んでいない。運営費交付金が減らされるんじゃないか、事務手続きが煩雑になるのではないか、といった誤解があるためだ。実際にはそんなことはない。文科省・経産省・経団連が公表した大学ファクトブックと産学官連携ガイドラインでは、こうしたことが丁寧に説明されている▼毎日の仕事に追われていると、大事な情報を見逃したり、後回しにしてしまうことも多い。その油断が何年も続くと、大学の経営状況は悪化してしまい、結果として研究環境も悪化、自由な発想の学術研究ができなくなってしまう。産学連携に限らず、周りをもう一度見直してみよう。

  • facebook
  • twitter
  • Google +
  • はてなブックマーク
  • LINE
  • Mail
THE SCIENCE NEWS
  • facebook
  • twitter
  • Google +
  • はてなブックマーク
  • LINE
  • 購読申込
  • メール