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コラム・素領域

2022年11月11日号

素領域

近年、光を利用したがん治療である「光免疫療法」が、「手術」「薬物療法」「放射線療法」「免疫療法」に次ぐ第5のがん治療法として注目されている。2011年に米国国立衛生研究所・国立がん研究所の小林久隆氏らにより初めて報告された▼「光免疫療法(NIR-PIT)」は、がん細胞に発現する抗原に、特定の波長の近赤外光で活性化する化合物を結合した薬剤を投与。同波長の近赤外光を照射することで薬剤が結合したがん細胞のみを選択的に破壊する。さらに破壊されたがん細胞が免疫に認識されることで、治療後の再発がんや転移がんにも効果を発揮すると考えられている▼同治療法の薬剤は20年には厚生労働省から条件付き早期承認制度により「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を対象に世界に先駆けて薬事承認された。21年には保険適用されている。原理的には様々ながん種に効果を発揮すると考えられ、乳がんをはじめとして幅広く研究が進められている。免疫療法は個人差が大きいが、がん治療の選択肢になると対象の拡大が期待される▼今年4月に関西医科大学は同治療法の基礎および応用研究を進めるため、光免疫医学研究所を設立。小林氏は所長に就任した▼同治療法は近赤外光が届く範囲にのみ効果を発揮することから、深部には適用が困難とされていたが照射装置の開発も進み、心筋梗塞などの治療に用いられる血管内治療技術を応用したシステムも開発された。連鎖反応のように広がりを見せる同治療法の発展に今後も期待したい。

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