政府はセキュリティクリアランス制度を創設するための検討を始めた。セキュリティクリアランスは、国家における情報保全措置の一環として、政府が保有する安全保障上重要な情報を指定し、その情報にアクセスする必要がある人に対して政府が調査を行い、その人の信頼性を確認した上でアクセス権を付与する制度。情報を漏洩した場合には厳罰が科される▼制度の概要からすると、公務員の一部にしか関係がないのではないかと思われるかもしれないが、技術の進展と世界の変化によって、研究者や民間企業等にも大いに関係がありそうだ▼安全保障の裾野が経済、技術分野に急速に拡大しており、AIや量子技術といった先端技術は、安全保障分野でも重要な技術となっている。一方、米中の対立などを背景に国家としての機微技術の情報保全のため、欧米各国はセキュリティクリアランス制度を導入した▼セキュリティクリアランス資格は自国民に与えるお墨付きのようなものものだ。そのため、制度の導入で日本が排除されることになってしまった。資格を取得している人でないと、特定技術の国際共同研究に参加できなかったり、国際調達などでも資格が参加条件になったりするためだ▼岸田文雄首相は2月の経済安全保障推進会議で、今後1年をめどに法整備に向けた検討を行うよう指示。高市早苗担当相はより早く結論を出すべく有識者会議を立ち上げた▼具体的な制度設計はこれからだが、誰がどこまで個人情報を調べ、どういった問題があると資格が与えられないのか、資格が与えられなかった場合に組織から負のレッテルを貼られないかなどの課題も多い。慎重かつ早急に議論を進める必要がある。
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