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コラム・素領域

2023年4月14日号

素領域

経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス(SC)制度の創設に向けて議論が活発化している▼SCは、政府が持つ機密情報にアクセスできる権限を与えるもの。米国では機密情報のレベルを機密(top secret)、極秘(secret)、秘(confidential)に区分し、それぞれにアクセス資格が必要で、他のG7諸国も基本的には同様だ。お互いの資格を認めることで、各国企業が国際調達などに参加したり、最先端の国際共同研究を可能にしたりしている▼日本には特定秘密保護法があるが、安全保障に関係する情報のみが対象で、民間のアクセス権限保持者は3%しかいない。欧米とも相互承認できる資格を構築するため、政府の有識者会議で議論が進んでいるが、この中で、大学の研究者の扱いが課題になっている▼ある有識者は「米国における大学へのSCと同様の制度を日本の大学にそのまま適用することはできない。一般の大学に所属し、将来的にSCが必要な情報に接することに同意している研究者は、法人にSCを実施できる国立の研究機関や民間企業に移っていただくしかない」と言い、移籍後の報酬や研究費、必要施設などで十分に処遇すべきとしている▼米国などでは、国防省等の研究開発を行う場合、大学の外にある施設で研究開発を行い、大学での学術研究とは切り分けている。先日の議論は建前論としては正解だが、現場における現実の姿とは異なる。優秀な研究者ほど若者の教育に熱心であり、そうした人がSC資格を得られないのだとすれば、特定先端技術の国際共同研究における日本の立ち位置は低いものになってしまう。制度以前に環境整備が必要だ。

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