国連は昨年、世界人口が80億人に達したと発表し、2050年には97億人、80年には約104億人でピークを迎えると予測した▼2013年5月に国連食糧農業機関(FAO)は食品および飼料における昆虫類の役割に注目する報告書を公表した。FAOがオランダのヴァーヘニンゲン大学と共同で行った調査研究によれば、人は1990種類を超える昆虫を食用にしている。昆虫は食品および飼料としての可能性を秘めていると報告した▼実際、昆虫は動物性タンパク質を得るための飼料に用いる穀物量が他の家畜動物より少なくて済み、昨今の飼料価格の高騰と相まって食用あるいは飼料用としての生産に期待が高まっている▼日本では(独)大阪府立環境農林水産総合研究所が、食品ロスの増加や食料危機などの社会課題の解決を目指し、大学や企業などと共同で2020年9月に昆虫ビジネス研究開発プラットフォームを設立。昆虫を新たな可能性を秘めた次世代タンパク質資源と位置づけ、生産方法や製品性能・安全性の評価、機能性探索や用途開発を行っている。農研機構でも先日、食品廃棄物をエサに用いた成果が発表された▼一部の昆虫は既に食用として商品化され、コオロギをお菓子に加工したものは結構おいしかった。しかしながらどんな生物でも家畜化には多大な労力を要するものだし、現代の科学技術をもってしても言うほど易くはない▼昆虫研究はいまに始まった話ではなく長らく続く興味深い分野だ。食用は嗜好性の問題があるのでひとまずおくとしても、研究の進展に期待したい。個人的には必要に迫られなければ生のタガメをいただくのは無理かもしれないと思っている。
© 2024 THE SCIENCE NEWS