人類に貢献すべき科学技術が、いま非常に危うい気がしてならない。最先端の半導体技術や光技術、宇宙・航空技術、情報通信技術、そして核技術などが盛んに軍事やテロ活動に使われている▼デュアルユースというが、近年は平和利用の側面は影が薄い。例えばIT技術の進歩でインターネットが発展したが、その技術はサイバー攻撃などに悪用され、日常生活における情報通信インフラの便利な利用を脅かしている▼宇宙・航空技術はミサイルやスパイ衛星などに使われ、近年普及してきたドローンは、ウクライナとロシアの戦争でも見られるように、無人兵器として利用が進んでいる▼幅広い産業を支える半導体技術も各種の兵器に欠かせない重要な基盤となっている。核兵器はいまのところ人類最大の脅威であるが、これから登場が予想されるAIを使った兵器も大変恐ろしいものになるに違いない▼新型コロナによるパンデミックが長期にわたって続き世界が分断され、そのスキを狙ったかのようにロシアのウクライナ侵攻が起きた。繰り返される北朝鮮のミサイル発射実験や、中国の軍拡と領海侵入も不気味である。そして、新たに始まったパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスとイスラエルの紛争▼地球温暖化をはじめとして、自然災害や貧困・飢えなど、いま人類は対応を急ぐべき問題をたくさん抱えている。それなのに、人類の知を集めたはずの科学技術は軍事利用へ傾くばかりである。いったい、SDGsのための科学技術はどこへ行ってしまったのだろうか▼このまま軍事利用が進めばどうなるのか。科学技術の進歩で発展してきた人類社会は、そう遠くない未来に科学技術の進歩で崩壊へと向かう? そんなシナリオはSFの世界だけにしてほしい。
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