ムーンショット型研究開発制度は、2050年に実現すべき社会を目標として掲げ、破壊的イノベーションを実現するため、失敗を許容し、研究者が長期的な視点で挑戦的な課題に挑戦できることをうたった大型の研究プログラムだ▼しかし、現場の研究者からは「進捗管理が厳しい」「自由に挑戦的な研究ができない」といった、破壊的イノベーションにつながる創造的な仕事ができる環境ではないのではないかという声が多く聞かれる▼破壊的イノベーションの成功事例の一つに青色発光ダイオードがある。青色LEDの発明は、世界のエネルギー消費を大きく減少させ、また数兆円レベルの経済効果と雇用を生み出したが、その開発は困難を極めた。赤崎勇氏、天野浩氏は10年以上もの間、「そんなことはできるはずがない」と学会等でも評価されず、年会の研究会では司会が赤崎氏、発表者は天野氏、聴講者が中村修二氏の3人だけだったこともあったという。しかし数多くの失敗の繰り返しの中から、青色LEDを生み出した▼ムーンショット制度設計の際「失敗しても良いから挑戦的な研究に取り組んでもらい、破壊的なイノベーションを生み出す」がうたい文句であった。しかし現実はファンディング機関の内部規定に基づいて、失敗しないための進捗管理が行われているのではないか。高市早苗科学技術政策担当相は「そのような運営が行われていないか、他にも課題がないか。関係部署、研究推進法人とも連携しながら確認していくよう、担当部局に指示を出しました」と話す。
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